成人で発症するリウマチ性疾患(膠原病)のなかには、小児期に発症するものがあります。多くの疾患は成人発症のものと同じ病名ですが、成人とは病態が異なる場合があります。なかには、「若年性皮膚筋炎」のように病名に“若年性”と冠した疾患があります。「若年性特発性関節炎(JIA)」は小児発症の慢性関節炎の複数の病型の総称で、関節リウマチと類似する病型を含みますが、小児特有の疾患概念です。
疾患によって、また個人によって、発症年齢や初発症状はさまざまです。重症度や臓器病変も多様です。その診断については、初発症状や検診や検査での異常所見をきっかけに、小児科、整形外科、皮膚科などで、小児リウマチ性疾患を疑われる経緯がよくみられます。原因不明の発熱の検査を行ううちに、この疾患の診断に至る場合もあります。成人のリウマチ性疾患に比べて稀な疾患であるため、診断に時間を要することがあるかもしれません。
主な小児リウマチ性疾患には、JIAや、全身の諸臓器、とくに 腎、皮膚、呼吸器、中枢神経系に慢性炎症を起こす全身性エリテマトーデス(SLE)、特有の皮疹と筋崩壊を起こす若年性皮膚筋炎(JDM)、いくつかの膠原病の特徴を合わせ持つ混合性結合組織病(MCTD)、口腔潰瘍や陰部潰瘍など粘膜病変が主な初発症状であるベーチェット病、唾液や涙液を分泌する外分泌腺の破壊に至るシェーグレン症候群、大小さまざまな動静脈の血管壁に炎症が生じる血管炎症候群(高安動脈炎、結節性多発動脈炎など)、細胞の構成成分であるリン脂質に対して抗体が産生され血管内で多数の微少な血栓が生じて全身の血栓症を起こしたり流産に至ったりする抗リン脂質抗体症候群などがあります。ほとんどの小児リウマチ性疾患は、小児慢性特定疾病という、児童福祉法による医療助成制度の対象となっています(https://www.shouman.jp/)。新規申請は18歳未満、継続は20歳未満が対象となります。自治体が申請の窓口となりますが、申請対象かどうかについては主治医にご相談ください。
これらの疾患はまずは正しい診断と適切な治療の開始を可能な限り早い時期に行うことが重要です。その後は、外来での治療や経過観察を継続していくことが小児発症慢性疾患として大切です。治療選択に年齢に応じた配慮が求められる場合や、治療薬の変更や追加が必要となることもあります。
疾患により、また同じ疾患でも重症度により差異がありますが、大人になるまでに、無治療で寛解を達成し、通院が不要になる方もいれば、大人になっても通院や治療の継続が必要になる方もいます。年齢に応じて本人の意思を尊重し、徐々に自立を促していくことを心がけていきましょう。
文責 宮前多佳子
2022年8月31日