東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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生物学的製剤は、「効果は高いが高価」な薬剤であり、同時に医療費の高騰が懸念されています。 関節リウマチのような慢性疾患では長期にわたる治療が必要であり、生涯に要する患者さんの医療費負担は大きくなります。現在の日本の保険制度では、多くの患者さんの自己負担は30%で、残りの医療費の70%が国民医療費(国民の税金)から支払われているので重要な社会的問題にもなっています。このような社会背景の中で、より医療費の削減を目指し開発されたのが、生物学的製剤の「バイオシミラー(バイオ後続品)」です。

「バイオシミラー」とは、生物学的製剤の後発医薬品の総称であり、生物学的製剤のジェネリック医薬品のようなものです。どちらも開発特許が切れた薬剤の後発医薬品でありますが、バイオシミラーはジェネリック医薬品とは違う点があります。分子量の大きさは、ジェネリック医薬品が自転車であるのに対し、バイオシミラーは飛行機やロケットくらいに例えられるほどの違いがあります。ジェネリック医薬品は、分子量の小さい化学薬品で、先発品と全く同じ化学構造をしているため、「同じ成分、同じ効き目」ですが、臨床研究(治験)をしていませんので、同じ効き目であることは科学的に証明されていません。よってジェネリック医薬品は「同じ成分、たぶん同じ効き目の安価な医薬品」と表現するのが正確です。一方、バイオシミラーは分子量の大きな生物学的製剤の後発医薬品であり、化学構造は同一ではありませんがほぼ同じです。そして、有効性や安全性に対して臨床試験(治験)を行っているため、効き目が先発品の生物学的製剤(先行バイオ医薬品)と同様であることは、科学的に証明されています。すなわち、バイオシミラーは先行バイオ医薬品との比較試験で、品質、有効性、安全性においてバイオシミラリティ(同等性・同質性)が示された場合にのみ承認され、承認されたバイオシミラーは、先行バイオ医薬品と同じ方法で適切な患者に使用することができるのです。

ヨーロッパの特に北欧においては、国家の医療費削減のため、国策として生物学的製剤のオリジナルの先発品からバイオシミラーへの切り替えが積極的に行われて おり、切り替えによる有効性、安全性の先発品の生物学的製剤(先行バイオ医薬品)に対する非劣性が示されています。

現在、日本で使用可能なのは、レミケード®のバイオシミラーであるインフリキシマブBS、エンブレル®のバイオシミラーであるエタネルセプトBS、ヒュミラ®のバイオシミラーであるアダリムマブBSの3製剤が関節リウマチ患者さんに対し使用することが可能です。バイオシミラーの薬価は、先発品の生物学的製剤(先行バイオ医薬品)の約40-60%程度と安価です。

生物学的製剤としてバイオシミラーを使用するか、また、レミケード®やエンブレル®、ヒュミラ®などの先行バイオ医薬品をお使いの患者さんがバイオシミラーへの切り替えを行うかどうかは、担当の医師にご相談ください。

また過去のIORRAニュースでもバイオシミラーに関して取り上げています。

IORRA NewsNo.38(2020年4月)

文責 田中榮一
2023年10月13日更新