「レミケード」はTNFαという炎症反応に関与する生体内物質の働きを抗体によって抑える抗体製剤です。TNFαはもともと人の身体に存在するものですが、関節リウマチでは異常に増加しており、炎症の場で中心的に働いていると考えられています。
「レミケード」はTNFαと結合する部位がマウス由来の蛋白質、その他がヒト由来の蛋白で、遺伝子工学によって2種の蛋白を合体させたものです(キメラ型モノクローナル抗体)。関節リウマチ治療薬としては日本で初めて認可された生物学的製剤であり、他の生物学的製剤に先駆けて2003年7月に使用が開始されました。現在までに国内で5万人以上、世界では約90ヶ国、115万人以上の方々に使用されています。
「レミケード」は約2時間かけて点滴注射で投与します。初回、2週後、その4週後(初回投与の6週後)に投与した後、通常、8週間ごとの投与となります。当センターでは外来での投与だけでなく、必要に応じて入院での投与も行っています。2ヶ月に1度という投与間隔の長さは生物学的製剤の中で最長であり、「レミケード」の特徴の一つです。また2009年には効果不十分の場合に投与量を増やしたり、投与間隔を短縮することも可能になりました。
「レミケード」の特徴は速効性にもあり、投与開始6週後には非常に高い割合で強い症状改善効果(痛みや腫れを抑える効果)が確認できます。場合によっては初回投与の直後から効果を実感出来る場合もあるようです。もちろん他の生物学的製剤同様、高い関節破壊抑制効果も認められています。またレミケード投与により寛解を持続できた患者さんの約半数で、レミケードを中断しても寛解状態を維持できたという報告もあり、投与を止めれる可能性が証明されている生物学的製剤です。
「レミケード」は中和抗体(レミケードに対する抗体)が出現することがあり、それにより効果が減弱することがあります。「レミケード」の投与にはリウマトレックスの併用が必要ですが、これは中和抗体をできにくくするためです。「レミケード」は生物学的製剤の中で最も継続率が低いとする報告が多いのですが、この中和抗体の存在による効果減弱の影響が大きいと考えられています。ただし2009年に増量と投与間隔の短縮が可能となってからは効果減弱する割合は減っているようです。またマウス由来の蛋白を含むため、アレルギー反応がおこることがあり、非常に稀ですがアナフィラキシーという生命に関わる強いアレルギー反応も起こりえます。そしてこれは生物学的製剤全てに言えることですが、免疫の働きを低下させるため、感染症にかかりやすくなることがあります。
「レミケード」は1本(100mg)約10万円です。体重1kgあたり3mg投与する場合(標準使用量)、体重が66.6kgまでの患者さんは2本、66.7kg以上100kgまでの患者さんは3本必要となります。2本投与の場合、通常2ヶ月ごとに約6万円(1ヶ月あたり約3万円)が自己負担額となり(3割負担の場合)、これに再診料・検査料・処方箋料などが加わります。自己負担額が隔月に集中するため、他の生物学的製剤と比べて高額療養費制度に該当しやすいという特徴もあり、条件が合えば安価に使用できる生物学的製剤です。
文責 猪狩勝則
2013年7月10日改筆