東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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「オレンシア」は免疫をつかさどるTリンパ球(T細胞)の働きを抑えることで、TNFαやIL6などの炎症反応に関与する生体内物質(サイトカイン)の過剰な産生を抑え、関節の痛みや腫れを和らげます。他の生物学製剤がサイトカイン(TNFやIL6)の働きを抑えるのに対し、「オレンシア」はその上流に位置するT細胞の活性化を直接抑制するため、関節リウマチという病気をより病因に近い段階から抑えることができる可能性が示唆されています。

日本人の関節リウマチ患者さんに6ヶ月間「オレンシア」を投与した調査では、およそ9割の方で一定以上の効果がみられ、4割の方で非常に良好な効果がえられています。ただし炎症反応に関与する生体内物質(サイトカイン)を直接抑えるのではなく、その過剰な産生を抑える薬のため、効果の発現はやや遅い印象があります。個人差がありますが、1ヶ月程度で効果が現れる患者さんもいれば、3ヶ月程度で効果が現れる患者さんもいらっしゃいます。

日本では2010年に静注製剤(4週間ごと)が、2013年に皮下注製剤(1週間ごと)が発売され、両方での投与が可能です。皮下注射製剤は、自宅で患者さんご自身による自己注射による投与が一般的です。メトトレキサート(リウマトレックス®)と併用しての投与が基本ですが、メトトレキサートとの併用がなくても使用することができます。抗CCP抗体が高値陽性症例にて、より高い有用性が示されています。

「オレンシア」も他の生物学的製剤同様、免疫の働きを低下させるため、感染症にかかりやすくなることがありますが、生物学製剤の中では比較的副作用が少なく、比較的安全に使えると考えられており、高齢者や、メトトレキサートが十分に使用できないような患者さんなどでの有用性が期待されています。

「オレンシア」は点滴でも皮下注射でも投与可能な生物学的製剤ですが、当院では、現在、皮下注射製剤のみの投与が可能です。「オレンシア」の点滴製剤は1本(250mg)約5万円です。1回の投与で体重が60kg未満の患者さんは2本、60kg以上100kg以下の患者さんは3本必要となります。2本投与の場合、通常1ヶ月あたり約3.3万円の自己負担となり(3割負担の場合)、これに再診料・検査料・処方箋料などが加わります 。一方、皮下注射製剤は、1本(125mg)約3万円です。毎週1回投与を行うため、約3割負担の場合、1ヶ月あたり3.4万円程度となり、これに再診料・検査料・処方箋料・在宅自己注射管理料(皮下注射のみ)などが加わります。

文責 田中榮一
2023年10月11日更新