東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
外来診療予約

「オレンシア」は2010年9月に国内発売がはじまった生物学的製剤で、すでに世界50カ国以上で使用されています。「オレンシア」は免疫をつかさどるTリンパ球(T細胞)の働きを抑えることで、TNFαやIL6などの炎症反応に関与する生体内物質(サイトカイン)の過剰な産生を抑え、関節の痛みや腫れを和らげます。他の生物学製剤がサイトカイン(TNFやIL6)の働きを抑えるのに対し、「オレンシア」はその上流に位置するT細胞の活性化を直接抑制するため、関節リウマチという病気をより根本に近い段階から抑えることができる可能性が示唆されています。

日本人の関節リウマチ患者さんに6ヶ月間「オレンシア」を投与した調査では、およそ9割の方で一定以上の効果がみられ、4割の方で非常に良好な効果がえられています。ただし炎症反応に関与する生体内物質(サイトカイン)を直接抑えるのではなく、その過剰な産生を抑える薬のため、効果の発現はやや遅い印象があります。個人差がありますが、1ヶ月程度で効果が現れる患者さんもいれば、3~4ヶ月経ってから効果が現れる患者さんもいらっしゃいます。

「オレンシア」は約30分かけて点滴注射で投与します。初回、2週後、初回投与の4週後に投与した後、4週間ごとに投与します。当センター通院中の患者さんの多くは4週に1度の通院のため、はじめの4週以降は通院間隔を変更することなく生物学的製剤の投与を受けることが可能です。

「オレンシア」は1本(250mg)約5万円です。1回の投与で体重が60kg未満の患者さんは2本、60kg以上100kg以下の患者さんは3本必要となります。2本投与の場合、通常1ヶ月あたり約3万円の自己負担となり(3割負担の場合)、これに再診料・検査料・処方箋料などが加わります 。投与2ヶ月目以降は標準用量ではもっとも安価に使用できる生物学的製剤です(体重60kg未満の場合)。

「オレンシア」も他の生物学的製剤同様、免疫の働きを低下させるため、感染症にかかりやすくなることがありますが、生物学製剤の中では比較的副作用が少なく、比較的安全に使えると考えられています。また点適時や終了後にアレルギー反応が出ることもありますので、投与中やご帰宅後に気分が悪くなったり、息苦しさやかゆみなどを感じたら、すぐに主治医や看護師にお知らせください。

文責 猪狩勝則
2013年7月10日改筆