東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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「シムジア」は国内で2012年に承認された最新の生物学的製剤です。国内で発売された生物学的製剤としては7剤目、TNF阻害薬としては「レミケード」、「エンブレル」、「ヒュミラ」、「シンポニー」に次ぐ5剤目で「レミケード」、「ヒュミラ」、「シンポニー」同様に抗体の作用によってTNFαの働きを阻害しますが、その構造は他の抗体製剤とは異なる特徴を有しています。

抗体は基本的には同じY字型の構造をしていて、 Y字の上半分のV字部分にあたる場所がFab領域で、縦棒部分にあたる場所がFc領域です。抗原抗体作用を有しているのがこの2つのFab領域で、Fc領域はマクロファージや白血球の細胞表面にあるFc受容体と結合したり、補体の活性化や抗体依存性細胞傷害作用など、抗体が抗原に結合した後の反応を引き起こします。シムジアは世界初のペグ化抗ヒトTNF抗体で、抗ヒトTNFα抗体のFc領域を除いたFab断片に、ポリエチレングリコールを結合(ペグ化)させていてFc領域の作用がなく、分子量が小さいことが特徴です。これにより関節リウマチにおける炎症関節部位への移行が早いとされ、TNFαの炎症抑制効果の出現が比較的早いことが特徴です。またペグ化により水への溶解性が良くなり、血中濃度半減期が延び、効果が長持ちしやすいこと、さらには、Fc領域を欠くことにより、薬剤に対する抗体ができにくく、投与部位反応が少ないことが期待されます。

メトトレキサート(リウマトレックス®)の併用は必須ではありませんが、他の生物学的製剤と同様にメトトレキサートを併用したほうが有効性が高まります。

また、「シムジア」は、ほとんど胎盤を通過しないことが知られており、妊活中、妊娠中、授乳中の期間を通して、比較的安全に使用できうる薬剤として期待されています。

「シムジア」は他の生物学的製剤と同様、免疫の働きを低下させるため、感染症にかかりやすくなる事があります。体のだるさや口内炎、咳なども含め、少しでも「体調がおかしい」、「いつもと違う気がする」といった事があれば、すぐに主治医や看護師に相談してください。

「シムジア」の投与間隔は、初回投与後、2週後、4週後に1回400mgを皮下注射し、その後は2週間隔に1回200mgの皮下注射が基本ですが、症状が安定したら4週に1回400mgを皮下注射することも可能です。 「シムジア」は1本(200mg)約6万円であり、通常1ヶ月あたり約3.4万円の自己負担となり(3割負担の場合)、これに再診料・検査料・処方箋料・在宅自己注射管理料などが加わります。



文責 田中榮一
2023年10月11日更新