東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
外来診療予約

関節リウマチのような慢性疾患では長期間の治療が必要で、生涯に要する患者さんの医療費負担は大きくな近年、関節リウマチの治療は進歩し、生物学的製剤などの「効果は高いが高価」な薬剤が使われるようになり、同時に医療費の高騰が懸念されています。

当施設で行っているIORRA調査(2007年度の調査)によると、関節リウマチ患者さん1人の1年間あたりの直接医療費(自己負担費用)は26万4千円でした。これらの費用は、疾患活動性(病気の勢いの強さ)を示すDAS28や、身体機能障害(日常生活の不自由さ)を示すJ-HAQという指標、さらには生活の質(Quality of life [QOL]:日常生活がどれほど充実しているかということ)を示すEQ-5Dという指標が悪化すればするほど、関節リウマチ患者さんの負担が増大していることが分かりました。このことは関節リウマチを発症早期から積極的にコントロールをすること、すなわち、メトトレキサートや生物学的製剤を含めた積極的な治療をきちんと行うことにより疾患活動性が抑制できれば、身体機能障害も進まず、生活の質も低下せず、結果的に生涯の医療費が軽減する可能性があることを示しています。

また、関節リウマチは、勤務時間を減らしたり、転職せざるをえなかったり、仕事を辞めるなど、就労にも多大な影響を与える疾患です。勤務者の就労制限や家事の制限も、DAS28(病気の強さ)やJ-HAQ(機能障害の程度), EQ-5D(生活の質の程度)の増悪とともに悪化することも明らかとなっています。

関節リウマチ患者さんの負担額は増加傾向にあります。しかし、関節リウマチの治療がうまくいけば、関節くなったり、さらに就労が可能となると期待されますので、将来的な医療費は軽減されるとも考えられます。

同じ病院や診療所で支払った1ヶ月(1日から末日まで)の医療費自己負担額(外来診療、入院診療ごとにそれぞれ計算)が自己負担限度額を超える場合には、申請して認められれば、限度額を超えて支払った自己負担分を「高額療養費」として払い戻しを受けることができます。自己負担限度額は、加入している保険の種類・年齢・世帯所得により異なります。さらに2012年4月より、生物学的製剤などの高額な外来診療を受ける皆様に対し、「認定書」などを提示すれば、限度額を超える分を窓口で支払う必要がなくなるという新制度が開始されました。詳しくは、ご自身が加入している公的医療保険(国民健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国民健康保険・共済組合など)にお問い合わせください。また、一部の方には身体障害者手帳(市区町村により異なります)や介護保険制度が活用できる場合があります。詳しくは市町村役場にお問い合わせください。

皆様がより良い関節リウマチ医療を安心して受けていただけるよう、これからも医療費の問題に関しIORRA調査を中心として長期的な視点で検討を進めていく予定です。

こちらの英語論文に詳細な記載があります。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22878927

また過去のIORRAニュースでも医療費の話題を取り上げています。

関節リウマチの医療費について IORRA NewsNo.19(2010年10月) IORRA NewsNo.21(2011年10月)

文責:田中 栄一
2023年10月18日