東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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小児の疾患において、副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)は腎疾患、気管支喘息、など幅広い疾患で全身投与(内服、点滴投与など)により使用されています。小児リウマチ疾患では、全身型若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、混合性組織結合症、皮膚筋炎などにおける、急性期治療として、現在中核的に選択されています。ステロイドの用法や用量は、疾患によっても、また疾患の重症度によっても異なりますが、過剰となっている免疫を抑制するために使用され、多くの場合は、他の免疫抑制剤と併用します。その結果、臓器障害の発生や進行を阻止し、質の高い日常生活を送れるようにすることを目標としています。

疾患活動性が高い場合には、強い治療効果を速やかに得るために、ステロイドを点滴で大量に使用するステロイドパルス療法を行う場合があり、その後内服へと変更していきます。ステロイドパルス療法は原則として入院での治療として行います。

一方で、ステロイドには多彩な副作用を呈するため、疾患活動性を抑制させるとともに、副作用に留意する必要があります。

<ステロイドの使用に対する注意点>

1. 副作用

成長障害(投与量と投与期間によって、身長の伸びが抑制されます)、眼病変(緑内障、白内障)、骨粗鬆症、高血糖、高血圧、脂質異常症、満月様顔貌、多毛、易感染症などが挙げられます。

2. 急な自己中断に伴うステロイド離脱症候群

ステロイドはプレドニゾロン換算で2.5~7mg/日程度が生理的に分泌されていますが、プレドニゾロンの長期内服を継続している場合、副腎皮質からのステロイドが分泌されなくなります。そのため、急に内服を中断すると、体の生命維持に必要な副腎皮質ステロイドが不足した状態となり、倦怠感、吐き気、頭痛、血圧低下(ショック)、意識障害などの症状が見られることがあります。自己判断による急なステロイドの中止は危険です。胃腸炎などの感染症に伴い内服が困難になる場合は、主治医にご相談ください。

3. ワクチン接種

不活化ワクチン

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、ステロイド内服中も推奨されています。

その他の、肺炎球菌ワクチン、Hibワクチン、4種混合ワクチン、B型肝炎、日本脳炎ワクチンなどの不活化ワクチン(原料に、感染力をなくした細菌やウイルスが使用されています)は使用しているステロイドの用量により、抗体の上昇が乏しく、効果不十分となる可能性がありますので、接種については主治医と相談ください。

子宮頸がんワクチンも不活化ワクチンのひとつです。本邦では、複合性局所疼痛症候群など稀な副反応(発症率 0.03%)が報告されたため、2013年より積極的な勧奨を一時的に差し控えられていましたが、2022年より他の定期接種と同様に、個別の勧奨を行うこととなっています。定期接種の対象者は小学校6年〜高校1年生相当の女の子で、公費により3回の接種が受けられます。平成9年度~平成17年度生まれまで(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)の女性のうち、HPVワクチンの接種を逃した方にもキャッチアップ接種の機会が提供されています。

新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの接種に関しても他のワクチンと同様に、ステロイド投与量によっては、ワクチンによる抗体上昇に影響を及ぼす可能性がありますが、接種回数を重ねることによって、重症化予防効果があることが報告されています。基本的には疾患活動性が安定しているタイミングで、ワクチンの主治医と相談しメリット・デメリットを理解した上でご判断ください。

生ワクチン

麻疹・風疹(MR)、おたふくかぜ、水痘、BCG(結核)ワクチンなどの生ワクチン(原料に毒性を弱めた状態の生きた細菌やウイルスを使用しています)についても、ステロイドの内服量や併用する免疫抑制薬によって、投与の可否を検討する必要があります。主治医と相談してください。

文責 谷 諭美

2022年11月1日