「膠原病」は、真皮・靱帯・腱・骨・軟骨などを構成する蛋白質であるコラーゲンに全身的に障害・炎症を生じる様々な疾患の総称です。関節リウマチは代表的な膠原病ですが、関節リウマチ単独でそのほかの膠原病すべて合わせたよりも患者数が多いこと、そのほかの膠原病に比べると皮膚・内臓病変が少なく、関節症状が主体になること、したがって本邦においては比較的最近までは整形外科医が治療の中心にあったことなどから、ほかの膠原病とは区別されることが多いです。関節リウマチとそのほかの膠原病は、共に自己免疫が病態背景にあるため、合併することはまれではありません。
膠原病の歴史
1942年、米国の病理学者Paul Klempererが提唱した病理組織学的概念です(JAMA. 1942;119:331)。当初は、結合組織(真皮・靱帯・腱・骨・軟骨など)のびまん性変性、特にその細胞外構成成分(= 膠原/コラーゲン)の異常によって特徴付けられる、急性または慢性の疾患に適用されました。具体的には、今日の病名に当てはめると、リウマチ熱、関節リウマチ、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、皮膚筋炎の6疾患が含まれるとされました。
膠原病とは
「膠原病」という用語は、臓器病理学や細胞病理学が支配的で結合組織への関心が低かった当時に、全身に広く分布する結合組織という1つの組織系に一次的病変をもつ疾患群に着目され導入されました。膠原病は単一の疾患を指し示す臨床的診断名でも、病因を意味する用語でもなく、結合組織のびまん性変性、特にその細胞外構成成分の異常によって特徴付けられる病理組織学的特徴をもつ疾患群の総称です。
膠原病に含まれる疾患
リウマチ熱は、ほかの膠原病と異なり自己免疫疾患ではなく、溶連菌の感染が原因であること明らかとなったことから、膠原病には分類されない傾向にあります。前述の「古典的膠原病」のほかにも、今日の分類では、膠原病~類縁疾患として、多発(性)筋炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、結節性多発動脈炎以外の血管炎症候群(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性肉芽腫性多発血管炎、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎など)、若年性特発性関節炎、成人発症スティル病、ベーチェット病、抗リン脂質抗体症候群など多くの疾患が含まれます。
リウマチ性疾患とは
リウマチ性疾患とは、筋肉骨格系の痛みとこわばりを生じる疾患の総称です。
自己免疫疾患とは
自己免疫疾患とは、異物を認識し排除するための役割を持つ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで症状を来す疾患の総称です。
難病とは
難病とは、1)原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病、2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護等に等しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病、と定義されています。膠原病~類縁疾患の多くが、厚生労働大臣によって難病に指定されています。難病のなかでは、「免疫疾患」に分類されていることが多いです。なお、「指定難病」と診断され、「重症度分類等」に照らして病状の程度が一定程度以上の場合は、「難病法」による医療費助成の対象となります。診断書(臨床調査個人票)など申請に必要な書類を揃えて都道府県・指定都市に申請してください。
http://www.nanbyou.or.jp/entry/5481/#04
関連する外部リンク
日本リウマチ学会による「リウマチ・膠原病」に関する一般の方向けのご説明は こちら
医療費助成制度などが記載されている、難病センター(厚生労働省補助事業)のページは こちら
文責 勝又康弘
2022年9月30日 更新
追記 本田 卓
2023年7月24日更新