東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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生物学的製剤は、関節リウマチの関節の炎症に大きく関わっている物質(TNF-αやIL-6と呼ばれる炎症性サイトカインといわれる分子)そのものを標的として、その働きを止めるお薬でしたが、一方で、JAK阻害薬は炎症性サイトカインによる刺激が細胞内に伝達されるときに必要なJAK(Janus kinase[ヤヌスキナーゼ]の略称)という酵素を阻害することにより、新たな炎症性サイトカインの産生を阻害するなどの効果から、抗リウマチ作用を示すお薬です。生物学的製剤が全て注射薬であるのに対し、JAK阻害薬は低分子化合物であり、経口内服可能なお薬です。

関節リウマチに対するJAK阻害薬の効果は、生物学的製剤とほぼ同等かそれ以上といわれています。日本では、2013年にトファシチニブ(ゼルヤンツ®)が使用できるようになって以降、2023年10月現在、バリシチニブ(オルミエント®)、ペフィシチニブ(スマイラフ®)、ウパダシチニブ(リンヴォック®)、フィルゴチニブ(ジセレカ®)と合わせ、計5種類が承認され使用することが出来ます。いずれもメトトレキサート(リウマトレックス®)などの他の抗リウマチ薬による治療で効果が不十分な場合に使用されます。

JAK阻害薬は、メトトレキサートを十分使用しても関節リウマチの病勢がコントロール出来ない場合や、生物学的製剤を使用しても病勢がコントロール出来ない場合など、数多くの臨床試験によりその有効性が明らかとなっています。

一方、JAK阻害薬の安全性の観点では、生物学的製剤と同様に、JAK阻害薬でも入院加療を要するような感染症などの重篤な副作用も一定の割合で起こるとされています。特に日本人では、帯状疱疹の発症リスクが高いとされており注意が必要です。帯状疱疹は発見や治療が遅れると、神経痛の後遺症に長期間悩まされることがあり、いかに発症しないように予防できるかが重要となります。過去に帯状疱疹を発症したことがある患者さんや高齢の患者さんなどでは、帯状疱疹ワクチンでの予防が推奨されています。最近、新しく認可されたシングリックス®は、関節リウマチ患者さんでも使用でき、予防効果が期待されています。また、JAK阻害薬の長期使用による心血管系イベント(狭心症や心筋梗塞など)や悪性腫瘍のリスクへの懸念もあり、日本人におけるJAK阻害薬の長期使用の安全性のデータの蓄積が求められています。さらには、薬剤費が非常に高価であることが大きな問題です。JAK阻害薬は、生物学的製剤の薬剤費よりも高額であり、毎月おおよそ4万~5万円(3割負担として)を支払い続ける必要があります。

これらの長期の安全性や医療経済的な観点から、日本リウマチ学会から2021年に発刊された「関節リウマチ診療ガイドライン2020」では、JAK阻害薬と生物学的製剤のどちらかを使用する場合、生物学的製剤が優先されると現状では明記されています。しかし、JAK阻害薬は、患者さんの痛みや疲労感、こわばりなど自覚症状も開始後、速やかに改善することが多く示されており、今後の関節リウマチ医療で非常に期待されている薬剤です。

また過去のIORRAニュースでもJAK阻害薬に関して取り上げています。

IORRA NewsNo.44(2023年4月)

文責 田中榮一
2023年10月13日更新