若年性特発性関節炎とは
小児リウマチ性疾患の中でもっとも頻度の高い疾患です。「16歳までに発症し、6週間以上続く原因不明(他に原因が特定されない)の慢性の関節炎」と定義されます。以前は「若年性慢性関節炎(JCA)」や「若年性関節リウマチ(JRA)」など様々に呼ばれた時期がありましたが、現在では国際リウマチ連盟(International League of Associations for Rheumatology: ILAR)により提唱された「若年性特発性関節炎(JIA)」の分類基準が国際的に普及しています。
JIAは7つの病型(病気のタイプ)をまとめた疾患概念ですが、大きくは関節型と全身型に二分されます。関節型は少関節炎、リウマトイド因子陰性多関節炎、リウマトイド因子陽性多関節炎の3つの病型を包含するものです。関節炎型は発症6ヶ月以内の炎症関節数で、1〜4か所に限局する場合に少関節炎、5か所以上におよぶ場合に多関節炎と分けられます。全身型JIAは関節炎に加えて発熱、全身性リンパ節腫脹、リウマトイド疹、肝脾腫、心膜炎などを併発する全身性炎症性疾患で、診断の困難な発熱をきたすことがあります。JIAの本邦における有病率は10万人当たり10~15 人と言われています。JIA には地域差,民族差が存在し、病型別頻度は地域,民族により大きな差異が認められる。表に示されているように、欧米では少関節炎が多く,全身型が少ない傾向があるのに対して、日本を含む東アジアでは少関節炎は少なく、全身型が多くJIA全体の半数近くを占めます。
JIAの患者さんの中には、ご家族に関節リウマチの方がおいでで、遺伝を心配される方がいらっしゃいますが、この疾患は生活習慣病と同様に、多因子疾患(多数の遺伝子が作用し、さらに生活習慣などの環境要因が加わって起こる病気。ひとつひとつの遺伝子の発症における影響の程度は大きくありません)とされています。
表 若年性特発性関節炎のILAR国際分類基準と本邦における頻度
病型 | 定義 | 欧米 | 日本(小児慢性特定疾病2008) | 日本小児リウマチ診療医 |
---|---|---|---|---|
1.全身型関節炎 |
1か所以上の関節炎と2週間以上続く発熱(うち3日間は連続し、ときに関節炎に先行する)を伴い、以下の徴候を一つ以上伴う関節炎。 1) 暫時の紅斑 2) 全身のリンパ節腫脹 3) 肝腫大または脾腫大 4) 漿膜炎 |
5~15% | 41.7% | 8~50% |
2.少関節炎 |
発症6ヶ月以内の炎症関節が1~4か所に限局する関節炎。以下の2つの型を区別する。 1) 持続型:全経過を通して4か所以下の関節炎 2) 進展型:発症6ヶ月以降に5か所以上に関節炎が見られる |
50~80% | 20.2% | 持続型5~15% 進展型0~10% |
3.リウマトイド因子陰性多関節炎 | 発症6ヶ月以内に5か所以上に関節炎が及ぶ型で、リウマトイド因子が陰性 | 17% | 13.7% | 10~30% |
4.リウマトイド因子陽性多関節炎 | 発症6ヶ月以内に5箇所以上に関節炎が及ぶ型で、リウマトイド因子が3ヶ月以上の間隔で測定して2回以上陽性 | 3% | 18.2% | 10~35.3% |
5.乾癬性関節炎 |
以下のいずれか 1) 乾癬を伴った関節炎 2) 少なくとも以下の2項目を伴う例 (A)指趾炎 (B)爪の変形(点状凹窩、爪甲剥離など) (C)親や同胞に乾癬患者 |
0~11% | 0% | 0~5.9% |
6.付着部炎関連関節炎 |
以下のいずれか 1) 関節炎と付着部炎 2) 関節炎あるいは付着部炎を認め、少なくとも以下の2項目以上を伴う例 (A)現在または過去の仙腸関節の圧痛±炎症性の腰仙関節痛 (B)HLAB-27陽性 (C)親や同胞に強直性脊椎炎、付着部関連関節炎、炎症性長疾患に伴う仙腸関節炎、Reiter症候群または急性前部ぶどう膜炎のいずれかの罹患歴がある (D)しばしば眼痛、発赤、羞明を伴う前部ぶどう膜炎 (E)6歳以上で関節炎を発症した男児 |
1~10% | 1.6% | 0~14% |
7.分類不能関節炎 | 6週間以上持続する小児期の原因不明の関節炎で、上記の分類基準を満たさないか、または複数の基準に重複するもの | 11~21% | 4.7% | 0~4% |
Petty RE, et al: J Rheumatol 2004;31: 390−392. PMID:14760812
武井修治:小慢データを利用した若年性特発性関節炎. JIAの二次調査. 厚生労働省科学研究費補助(子ども家庭総合研究事業)分担研究報告書.2008; 102-113.
岡本奈美、他:小児リウマチ2016;7:5-13.
宮前多佳子:若年性特発性関節炎総論. Evidence Based Medicineを活かす膠原病リウマチ診療第4版. 東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター編 191-194、2020.
関節型JIA
関節型JIAは、少関節炎、リウマトイド因子陰性多関節炎、リウマトイド因子陽性多関節炎の3つの病型を総称したものです。とくにリウマトイド因子陽性多関節炎は関節リウマチに近い病態であるとされています。
関節型JIAのメカニズム
子どもが関節痛を訴えることは珍しくありません。けがをすることも大人より多く、JIAと診断がつくまでに、長らく成長痛だと思っていた方もいます。JIAでみとめる関節炎は単なる関節痛ではなく、関節の慢性炎症です。
関節炎の早期では、関節を構成している滑膜細胞から炎症性サイトカインが分泌され、周囲の微小血管内皮細胞の損傷や活性化がおこります。滑膜細胞は重層化しパンヌスを形成し、軟骨から滑膜細胞層に血管が新生し、さらなる炎症細胞浸潤をきたす。パンヌスは、TNFα、IL-1、IL-6といった炎症性サイトカインを産生し、軟骨を破壊するMMP-3のような蛋白分解酵素や、RANKLによる破骨細胞の分化誘導などが起こり関節を破壊していきます。(図 かわべ)。骨にダメージが及んでいない段階ではレントゲンをとっても異常はみられません。関節の診察や関節超音波、MRIなどが診断に有用です。
関節型JIAの症状
関節炎の所見には、関節の腫脹、疼痛(圧痛)、熱感、発赤、可動域制限などが挙げられます。関節痛は起床時から午前中に最も強い傾向があり、移動性ではなく固定した関節に症状や所見を認めます。多関節炎の場合は左右対称性に生じることが多く、少関節炎では膝、足関節に罹患しやすい傾向があります。関節炎が抑制されないまま長期に及ぶと、関節の変形や成長障害が出現し、生活の質は著しく障害されることがあります。
また、抗核抗体が陽性である例は少関節炎やぶどう膜炎の合併との関連を認めることが知られており、眼合併症はとくに女児に多いことがしられています。治療の遅れ、または不十分な治療により失明に至る危険性のある重要な合併症で、JIAの2~24.4%、本邦では2~3%と推定されています。眼の症状がなくともぶどう膜炎を発症している可能性もあり、眼科の受診が重要です。
関節型JIAの検査
超音波検査やMRIは滑膜,腱,腱鞘,腱付着部,滑液包を含む周囲の軟部組織の評価に有用です。特に超音波検査は異常増殖した滑膜やその組織を栄養する血流の検出によって、手指などの小関節の滑膜炎の活動性の評価にも優れ、骨変化をきたす前段階においても感度の高い評価法です。
関節型JIAのすべての方にリウマトイド因子が陽性となるわけではありません。リウマトイド因子陽性率はJIA全体で25~30%程度であり、陰性であっても関節型JIAの否定根拠とはなりません。
リウマトイド因子と同時に検査されることの多い抗CCP抗体は、関節滑膜に発現するシトルリン化蛋白の一つであるフィラグリンのシトルリン化部位を含むペプチドを環状構造とした抗原CCPに対する自己抗体で、リウマトイド因子とともに関節炎の治療反応不良のリスク因子とされます。しかし、リウマトイド陰性の場合においても治療反応性が乏しく、治療選択の検討を要する場合があります。
関節型JIAの治療
非ステロイド抗炎症薬(いわゆる消炎鎮痛薬、NSAIDs)の単独投与の有効率は約3%と低く、治療の中核は従来型¬抗リウマチ薬(cDMARDs)であるメトトレキサート(Methotrexate:MTX)です。MTXは関節型JIAにおける標準治療薬として国際的に使用されている唯一のcDMARDsです。MTXは1週間に1回の内服治療で、その効果の判定は3ヶ月間を目安とします(ハイリスクの場合は2ヶ月)。ハイリスク症例は以下の項目のうち、1つでも合致すれば該当します。MTXは即効性ではないため、関節炎症の早期抑制を目的として副腎皮質ステロイドを併用することもあります。
- 抗CCP抗体陽性またはリウマトイド因子陽性
- 手関節炎または足関節炎に炎症マーカー高値(CRP・赤血球沈降速度(ESR)が正常上限の2倍以上)を伴う
- 頸椎や股関節病変がある
- 画像で骨破壊や骨髄浮腫を認める
MTXにより約70%の症例は疾患活動性を抑えることが可能ですが、効果不十分、もしくは、消化器症状や肝障害などの副作用で服用が困難な症例な場合には代替治療や生物学的製剤を検討します。
若年性特発性関節炎における生物学的製剤の投与
2022年現在、本邦では多関節に活動性を有するJIAに対して、完全ヒト化TNF-α受容体製剤エタネルセプト(etanercept: ETN)(エンブレル®),ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製材アダリムマブ(adalimumab: ADA)(ヒュミラ®),抗ヒト化抗ヒトIL-6受容体抗体トシリズマブ(tocilizumab: TCZ)(アクテムラ®)、 T細胞選択的共刺激調節剤アバタセプト(abatacept: ABT)(オレンシア®)の4剤が承認されています(表 関節型JIAに適応を有する生物学的製剤一覧)。(それぞれの生物学的製剤の特徴については、“生物学的製剤“をご参照ください。関節リウマチに適用のある薬剤、剤型のうち、関節型JIAに適用があるものは限定的です。しかし、難治性の関節型JIAに高率に有効であり、関節や・骨の変化を阻止し、副腎皮質ステロイドの投与量を減らすことが可能となっています。
生物学的製剤の剤形について
生物学的製剤を自己注射する場合、その薬剤の形状にはバイアル、ペンタイプとシリンジタイプの3種類が存在します
- バイアルは、瓶の中に薬剤(粉)が含まれており、自身で注射用水を用いて薬剤を溶かした後に、注射針及び注射器を用いて薬液を吸い取り、注射を行います。シリンジタイプは、針と薬剤の含まれた注射器(シリンジ)があらかじめセットされており、針のキャップを取れば、注射可能です。自身のペースで薬液の注入が行えます。
- シリンジタイプは針が見えてしまうため、恐怖感を強めてしまう可能性がありますが、補助具を用いることで針を見えなくすることも可能です。
- ペンタイプは、太いボールペンのような長さの筒の中に薬剤があらかじめ含まれており、ボタンを押すことで自動的に液体が注入されます。ペンタイプは、注射針が見えない、簡便であるというメリットがある一方で、一定の速度で薬液が注入されてしまうため、痛みを強く感じてしまうデメリットがあります。
表 関節型JIAに適応を有する生物学的製剤一覧
一般名 | トシリズマブ | エタネルセプト | アダリムマブ | アバタセプト |
---|---|---|---|---|
商品名 | アクテムラ® 80mg, 200mg, 400mg/バイアル |
エンブレル® 10mg,25mg バイアル製剤 |
ヒュミラ® 20mg,40mg/皮下注射用シリンジ |
オレンシア® 250mg/バイアル |
後続品商品名 | *エタネルセプトBS(後続1,2) | |||
標的分子 | IL-6 レセプター | TNF-α,β | TNF-α | CD80/86(T細胞) |
投与経路 | 点滴 | 皮下注射 | 皮下注射 | 点滴 |
1回投与量 | 8mg/kg | 0.2~0.4mg/kg/回(1回25mg上限) | 体重15-30kg未満 20mg 体重30kg以上 40mg |
10mg/kg/回, 体重75kg-100kg未満 750mg/回, 100kg以上 1000mg/回 |
投与間隔 | 4週毎 | 2回/週 | 2週毎 | 初回投与後2,4週,以後4週ごと |
使用制限 | 体重15kg以上 | |||
後続品商品名 | *エタネルセプトBS(MA, 後続1) 皮下注用バイアル 10mg,25mg *エタネルセプトBS(日医工,後続2) 皮下注用シリンジ10mg,25mg *エタネルセプトBS(TY, 後続2) 皮下注用シリンジ10mg,25mg |
総論・関節型JIA
文責 宮前多佳子・谷 諭美
2022年8月31日
全身型JIA
疫学・メカニズム
全身型JIAは、16歳未満に発症する自然免疫の異常による発熱と関節の炎症を起こすリウマチ性疾患です。発症年齢のピークは1-5歳ですが、小児期を通じて発症します。男子と女子で頻度は変わりません。
原因ははっきりとわかっていませんが、複数の疾患感受性遺伝子と、環境要因(生活習慣や感染症、ストレスなど)など多くの要因が発症に関連する多因子疾患と考えられています。インターロイキン6 (IL-6)やIL-1, IL-18といった炎症を引き起こすサイトカインが異常に産生されることで諸症状が出現します。
症状
- 全身症状
2週間以上にわたって続く、1日の中で1-2回39度以上に上昇する発熱で発症することが多く、発熱に伴う特徴的なリウマトイド湿疹・サーモンピンク疹と呼ばれる紅斑を認めます。これらの皮疹に痒みはありませんが、部位は移動性で体から手足、顔面へと移動することもあります。熱の高いときに皮膚症状は出現しやすい傾向にあります。また、強い倦怠感、全身のリンパ節腫脹、体重減少などを伴います。
- 関節症状
関節炎は多くの関節に認めますが、特に膝、手、足関節に高頻度でみられます。発症した初期の段階では、関節の痛みや腫れを認めない場合もありますが、全身型JIAの診断には関節症状の存在が重要です。
発熱や皮膚症状などの全身性の炎症症状が治まった後に、関節炎のみ残る「全身発症型関節炎」と呼ばれる病態に移行することもあります。
- その他の症状
肝臓、脾臓の腫れ(肝脾腫)、筋肉痛、漿膜炎(心膜炎や胸膜炎を)を認める場合があります。また、肺病変との関連が近年報告されており、特に若年発症の患者さんでは肺疾患の合併が高くなると言われています。
検査
上記の症状から、この疾患を疑い血液検査、画像検査を行います。この疾患に特異的な検査は存在せず、成人の関節リウマチや関節型JIAで認める抗CCP抗体などの自己抗体は陰性のため、臨床症状と以下の検査を合わせ、可能性のある他疾患を除外し、最終的に診断します。
血液検査では、好中球優位の白血球増多、血小板増多、貧血の進行を認めます。また赤沈値、CRP、血清アミロイドAといった炎症反応は高値を示し、凝固線溶系指標(FDP、Dダイマー)も高値となります。炎症性のサイトカインの上昇を反映するフェリチン値の上昇も特徴的です。
画像検査は、本疾患の強い全身の炎症を反映する18F-FDG-PET(保険適用外)やガリウムシンチグラフィが有用です。血液疾患の鑑別のために必要に応じて骨髄検査を行います。臨床症状とこれらの検査結果をもとに、感染症、血液疾患、血管炎症候群、他のリウマチ性疾患や自己炎症性疾患を除外して診断します。
診断の用いるJIA分類基準では、全身型JIAは、1カ所以上の関節炎と2週間以上続く発熱(うち3日間は連続し、時に関節炎に先行する)を伴い、1:暫時の紅斑、2:全身のリンパ節腫脹、3:肝腫大または脾腫大、4:漿膜炎の徴候のうち1つ以上を認めるものと定義されています。
治療と経過
治療は、疾患が発症後の急性期には発熱や疼痛など全身の炎症の抑制が目標となります。ステロイド薬が治療の中心ですが、非ステロイド性抗炎症薬(Nonsteroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)が有効であることもあります。本邦では、小児患者さんへのNSAIDsの保険適用は、イブプロフェンとナプロキセンのみですが、まずはこれらの使用を検討します。NSAIDsが無効な場合、大量の副腎皮質ステロイドの投与を行い炎症の抑制を目指します。寛解導入療法として、ステロイドパルス療法(大量療法)を用います。その後、維持療法として、副腎皮質ステロイドの内服を1日1回もしくは2回に分けて継続します。全身性の炎症が治まってから、副腎皮質ステロイド薬の減量を開始しますが、減量の過程で再燃することがあるため、症状や検査の値を確認しながら漸減します。
副腎皮質ステロイド薬は長期の投与に及ぶため、骨粗鬆症などの合併症予防や経過観察を行います。炎症を十分に抑えながら投与量を少なくし、お子さんの成長期における副腎皮質ステロイドの副作用の影響を最小限にする治療選択を心がける必要があります。
副腎皮質ステロイドを適切に使用しても炎症が抑制できない疾患の活動性が高く、減量が困難な場合には、生物学的製剤を導入します。現在、本邦で全身型JIAに保険適用が承認されている生物学的製剤は、抗ヒト化ヒトIL-6受容体抗体トシリズマブ(アクテムラ®︎)とヒト型ヒトIL-1βモノクローナル抗体カナキヌマブ(イラリス®)の2剤です。生物学的製剤が必要になる場合、まずはトシリズマブを選択します。
表 全身型JIAに適応を有する生物学的製剤一覧
一般名 | トシリズマブ | カナキヌマブ |
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商品名 | アクテムラ ® 80mg、200mg, 400mg/バイアル |
イラリス® 150mg/バイアル |
標的分子 | IL-6 レセプター | IL-1β |
投与経路 | 点滴 | 皮下注射 |
1回投与量 | 8mg/kg | 4mg/kg |
投与間隔 | 2-4週毎 | 4週毎 |
トシリズマブ投与中は、発熱や炎症反応の上昇が抑制されるため、感染症には十分な注意が必要であり、咳嗽、鼻汁過多といった気道症状や嘔吐下痢などの消化管症状を認めた場合は早期の病院受診と適切な対応が求められます。カナキヌマブは、トシリズマブで効果が乏しい場合、また副作用で使用困難な場合に選択されます。カナキヌマブの投与中は、同様に感染症や好中球減少症に注意が必要です。全身症状が落ち着いた後は副腎皮質ステロイドを減量を進めながら、再燃予防、関節破壊の予防による機能障害の抑制が目標となります。
全身型JIAは経過が良好な場合には、治療を終了することも可能です。全身型発症関節炎に移行した場合には関節炎に対して治療の継続が必要です。成人になっても医療の継続が必要になることもあります。
合併症
炎症性サイトカインの異常がさらに強くなりサイトカインストームという状態になると、高熱が続き、血液検査で白血球数や血小板数の低下、凝固線溶系の異常、急速な多臓器の障害を起こす、マクロファージ活性化症候群 (macrophage activation syndrome: MAS)に進行する場合があります。全身型JIAの少なくとも7%の患者さんがMASを合併し、大変重篤な状態に至る場合があるため、全身型JIAの経過中には常にMASの発症に留意する必要があります。MASの治療はサイトカインの過剰状態を沈静化することです。ステロイドパルス療法を早期に使用します。デキサメタゾンパルミチン酸エステル(リメタゾン®)も有効です。炎症性のサイトカインによって活性化されたTリンパ球を抑制し、ミトコンドリアの障害を予防するため、免疫抑制剤シクロスポリンも選択されることがあります。これら免疫抑制療法で効果が十分でない場合、単純血漿交換療法が有効ですが、重症化しないより早期の段階で診断し適切に治療を進めることが求められます。
関連する外部リンク
「若年性特発性関節炎」に関する、日本リウマチ学会の一般の方向けのご説明は こちら
文責 岸 崇之、谷 諭美
2022年10月5日更新
追記 本田 卓
2023年7月25日更新