東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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シェーグレン症候群は涙や唾液を作りだしている涙腺、唾液腺などの外分泌腺に慢性的に炎症が生じ、涙や唾液の分泌が低下、乾燥症状を呈する自己免疫性疾患です。男女比は1:14で女性に多く、発症年齢は50歳代にピークがありますが、子供からお年寄りまでさまざまな年齢で発症します。シェーグレン症候群は単独で発症する原発性シェーグレン症候群と、他の膠原病に合併して発病する二次性シェーグレン症候群があります。二次性シェーグレン症候群は、関節リウマチや全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎などに起こります。

症状

シェーグレン症候群の症状には、腺症状と腺外症状の二つがあります。腺症状はドライアイやドライマウスをはじめとする乾燥症状です。ドライアイの症状として、目がごろごろする、目が疲れやすい、まぶしく感じるなどがあり、ひどくなると角膜に傷がついて乾燥性角結膜炎や、表層性角膜びらんなどがおこります。ドライマウスの症状は、口が乾く、クラッカーやパンなどの「ぱさぱさしたもの」が食べにくい、食事中に水分を多くとる、長く話すと声がかれる、などがあります。唾液が少なくなるため、虫歯になりやすく、味覚障害が生じることがあります。腺外症状は、唾液腺、涙腺以外の臓器の症状で、倦怠感や関節痛といった全身症状や、間質性肺炎、腎炎、神経症状、紫斑、紅斑などです。

治療

治療は腺症状(ドライアイ・ドライマウス)に対しては、涙や唾液を補充する対症療法が主体です。ドライアイには、涙の補充に人工涙液(マイティア®, ソフトサンティア®)が用いられます。また水分保持効果のあるジクアス点眼®や粘液を産生する細胞を増やすムコスタ点眼®も新たに認可されました。その他、ドライアイ眼鏡の着用や、涙の出口である涙点をふさいで涙の排出を抑える方法もあります(涙点プラグ、涙点縫合)。ドライマウスに対しては、飲水やうがいをすることが望ましいのですが、飲水の効果は短時間であるため、人工唾液 (サリベート®) や保湿成分が入ったジェルなどが用いられます。また唾液そのものを出しやすくするお薬として、エポザック®、サリグレン®、サラジェン®を使用します。これらのお薬の効果には個人差があり、消化器症状や発汗などの副作用もみられるため、症状をみながら使用します。腺外症状に対しては、それぞれの臓器の症状に応じた治療が選択されます。

日常生活上の注意

シェーグレン症候群は慢性に経過する疾患なので、日常生活に注意することが重要です。乾燥性角結膜炎の早期発見や虫歯の予防のために、定期的に眼科や歯科を受診しましょう。普段からパソコンなどのOA機器の使用で眼を酷使することや、直射日光、エアコン、低湿度、煙・埃の多い環境を避けるようにしましょう。虫歯や歯周病の予防のため、砂糖を含む食事をできるだけ減らし、乾燥食品、香辛料、アルコール飲料の摂取は控え、食事の温度を工夫しましょう。口腔内環境の改善のために、禁煙は特に重要です。またストレスをためないようにしましょう。普段飲んでいるお薬の中には、副作用として口の渇きが起こるものもありますので、主治医や薬剤師さんに聞いてみましょう。

文責 市川奈緒美
2015年6月1日改筆