2003年のレミケードの発売以来、生物学的製剤は関節リウマチ治療における切り札となっています。今ではレミケード、エンブレル、ヒュミラ、アクテムラ、オレンシア、 シンポニー、 シムジアの7剤の生物学的製剤が使用可能となっており、今後も新たな生物学的製剤の発売が予定されています。発売されている生物学的製剤はいずれも概ね4割程度の患者さんで著効し、8割以上の患者さんで一定以上の効果があることが分かっており、これまでの抗リウマチ薬では充分に病勢を抑えきれなかった患者さんの多くで、その強力な効果が期待される薬剤です。しかし、逆に言えば切り札であるはずの生物学的製剤も全ての患者さんに有効なわけではありません。思ったほどの効果が得られなかった場合はどうすればよいのでしょうか。明確な指針はありませんが、現時点で以下のような選択肢が考えられます。
1)使用している生物学的製剤の増量、投与期間短縮
現時点で増量可能な生物学的製剤は限られています。標準使用量以上の増量が可能なのはレミケードとシンポニーのみであり、エンブレルは半量から開始した場合には標準使用量(週50mg)までの増量が可能ですが、それ以上の増量は認められていません。ヒュミラは他の抗リウマチ薬を併用していない場合のみ標準使用量(隔週40mg)の倍量までの増量が認められています。投与期間短縮が認められているのはレミケードのみで、8週間隔から4週間隔までの短縮が認められています。
2)他の生物学的製剤への変更
関節破壊を食い止めるためには、出来るだけ早く寛解状態になることが重要であることが分かっています。現在では使用可能な生物学的製剤の選択肢が増えているため、「将来のために出来るだけ他の生物学的製剤を温存する」という考え方は薄れてきているように思います。可能な限り速やかに寛解になるためには他の生物学的製剤への変更も積極的に考えるべきでしょう。TNF阻害薬(レミケード、エンブレル、ヒュミラ)の場合、同じグループである他のTNF阻害薬に変更するか、他の種類の生物学的製剤にするかの選択となりますが、少なくとも2剤目までは同じグループである他のTNF阻害薬への変更も充分に有効であると報告されています。
3)併用している抗リウマチ薬の追加、増量
使用している生物学的製剤でまずまずの効果は得られているものの、まだ少し症状が残っているような場合には、抗リウマチ薬の追加や併用している抗リウマチ薬の増量で充分な効果が得られることがあります。特にリウマトレックスの増量、プログラフの追加、増量が有効であることが多くの報告から明らかになっています。
4)関節手術の併用
生物学的製剤を使用しても一つないしは少数の関節炎のみが残る場合には、手術によって病巣を除去することも効果的です。以前は滑膜を切除をしても、将来的な関節破壊は予防できないと考えられていました。しかし生物学的製剤の登場以後、生物学的製剤の効果が不充分な場合には、病巣である滑膜を取り除けば生物学的製剤が効くレベルにまで病勢が下がることもあることが報告されています。
文責 猪狩勝則
2015年2月1日改筆