東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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「アクテムラ」は日本で開発された国産生物学的製剤で、最先端のバイオテクノロジー技術によって国内で製造されています。世界に先駆けて日本で発売されました。2008年に点滴静注製剤(8mg/kgを4週間ごと)、2013年に皮下注射製剤(162mgを2週間ごと)が発売され、両方での投与が可能です。皮下注射製剤は、自宅で患者さんご自身による自己注射による投与が一般的です。皮下注射製剤は2週間に1回投与が原則ですが、効果が十分でない場合は、1週間に1回まで投与間隔を短縮することが可能です。メトトレキサート(リウマトレックス®)と併用しての投与が基本ですが、メトトレキサートとの併用がなくても優れた効果を示すことが明らかとなっており、本剤はメトトレキサートが使用出来ない場合も効果が期待できる治療選択肢の1つです。

「アクテムラ」は他の生物学的製剤とは異なり、インターロイキン6(IL-6)というサイトカインの働きを抑える「抗ヒトインターロイキン6モノクローナル抗体製剤」です。IL-6は炎症に関与するサイトカインで関節リウマチでは体内で過剰に作られ、炎症に由来する様々な症状を引き起こしています。「アクテムラ」はIL-6が結合する受容体に結合して、IL-6が受容体に結合するのをブロックすることで炎症に由来する様々な症状を抑え、関節破壊の進行を抑制し、日常生活動作を改善します。

「アクテムラ」の効果には個人差がありますが、現在までの経験ではほとんどの患者さんで一定以上の効果が認められています。ただし「アクテムラ」は関節リウマチを根治させる薬剤ではありませんので、長期間にわたり投与を継続する必要があると考えられています。

「アクテムラ」は他の生物学的製剤同様に免疫機能を抑制させることで炎症を抑える効果を発揮するため、感染症にかかりやすくなることがあります。通常、感染症にかかると発熱や血液検査で炎症マーカー(CRPや血沈などの炎症を評価する指標)が上昇しますが、「アクテムラ」は炎症を強力に抑制するため、発熱しなかったり、炎症マーカーの数値が上昇せず、炎症がわかりにくくなります。軽いかぜだと思って放置していると重症化することも考えられますので、かぜの症状(発熱、息苦しさ、のどの痛み、咳、たん、鼻水など)を感じた場合は、例え軽度でも次の診療日を待たず、すぐに主治医、看護師、薬剤師にお申し出ください。

「アクテムラ」は点滴でも皮下注射でも投与可能な生物学的製剤ですが、当院では、現在、皮下注射製剤のみの投与が可能です。皮下注射は体重による増減はなく1本約3万2千円程度です。約3割負担の場合、1ヶ月あたり2万円程度となり、これに再診料・検査料・処方箋料・在宅自己注射管理料(皮下注射のみ)などが加わります。バイオシミラー製剤を除いて、オリジナルの生物学的製剤では、最も安価な製剤となります。当センターで良く使用されている生物学的製剤の1つです(2023年10月現在)。

文責 田中榮一
2023年10月11日更新